U型擁壁の設計|道路土工 擁壁工指針に準拠

v1.2.0 最終更新日: 2026-08-25

掘割式U型擁壁の設計計算ツールです。側壁は片持ばり、底版は弾性床上のはりとして部材の安全性を照査し、あわせて浮上がりに対する検討を行います。

このツールで検討できること
  • 掘割式U型擁壁の側壁・底版について、部材(断面)計算と浮上がりに対する検討を行います。
  • 左右で異なる土砂形状による偏土圧に対応し、安定性の照査も常に行います。
対象外・注意が必要な条件
  • 常時の土圧は静止土圧です(変位を許さない構造のため、主働土圧への低減は行いません)。他形式の擁壁とは前提が異なります。
  • 土圧は水平成分のみを考慮し、鉛直成分は無視します(滑動・転倒に対して安全側の扱いです)。
  • 地下水位・内水位は静水圧として扱い、浸透流・間隙水圧の変動は考慮しません。躯体は左右対称が前提です。
  • 底版の解析は鉛直地盤反力係数kvに依存します。kvの設定が結果に大きく影響します。

適用範囲と計算上の仮定をすべて見る

1. 基本条件

照査するのは、部材の安全性(側壁・底版)、浮上がり、および擁壁自体の安定性(転倒・滑動・支持)です。掘割式U型擁壁は本来、道路土工 擁壁工指針 5-7-6(2)により安定性の照査を省略してよいとされていますが、左右の土砂形状が異なると偏土圧が生じるため、同項に従い5-3-1(2)による安定性の照査もあわせて行います。

道路土工要綱 巻末資料 資料-1による地域別補正係数です。擁壁の設置地点が地域の境界線上にある場合は、係数の大きい方をとってください。

地盤種別と地域別補正係数から自動入力されます(kh = cz・kh0、小数点以下2けたに丸め)。kh0は道路土工 擁壁工指針 解表5-1のレベル1地震動の標準値で、Ⅰ種0.12・Ⅱ種0.15・Ⅲ種0.18です。

2. 躯体形状

底版下端から側壁天端までの全高です(底版厚H2を含みます)。

左右の側壁の内面間の距離です。擁壁底面幅Bは、内空幅・側壁基部厚・底版張出長から自動的に算出されます(B = Bi + 2・T2 + 2・Lo)。

側壁外面から外側への底版の張出し長さです。0とした場合は張出しなしとして扱います。張出しの有無で浮上がり計算の土圧作用面と摩擦角が変わります(張出しあり: 底版下端を通る鉛直な仮想背面・摩擦角φ / 張出しなし: 側壁・摩擦角2φ/3)。

3. 土砂形状

背面土の天端に法担ぎ(盛土)がある場合に「あり」を選びます。左右で別々に指定できます。法担ぎは換算等分布荷重として静止土圧に加算します。

側壁の外面(底版張出しがある場合は底版先端)から法尻までの水平距離です。土圧作用高より遠い法担ぎは土圧に影響しないものとして扱います。

法尻から法肩までの高さです。

法尻から法肩までの水平距離です。

側壁天端から背面地表面までの下がりです。0のときは地表面が側壁天端と同じ高さになります。

同上(右側)。左右で条件が異なると偏土圧が生じ、転倒・滑動・支持の照査が効いてきます。

4. 内空・水位条件

底版下端を基準とした地下水位の高さです。浮力・水圧はこの水位から算定します。

底版上面を基準とした内空側の水位です。内水位は側壁内面に外向きの水圧として作用し、土圧に抵抗する側に働きます。このため既定値は安全側の0としています。水が常に存在することが保証される場合にのみ入力してください。なお内空の水そのものの重量は、底版の鉛直荷重にも浮上がり計算にも算入していません(内空が空の状態が安全側となるため)。中詰め土がある場合、その重量は算入します。

底版と側壁に囲まれた内部に中詰め土を入れる形式(中詰め式U型擁壁)の場合に「あり」を選びます。中詰め土は側壁の内面に外向きの土圧として作用し、背面土圧に抵抗します。あわせて底版の鉛直荷重と、浮上がり計算の底版上の土の重量WSに算入します。「なし」の場合は内空が空の掘割式U型擁壁として扱います。

底版上面から中詰め土の天端までの高さです。側壁高(擁壁高 H − 底版厚 H2)以下としてください。

中詰め土の湿潤単位体積重量です。内空水位より上の部分に用います。

中詰め土の飽和単位体積重量です。内空水位以下の部分に用い、水中単位体積重量(γfsat − γw)として有効鉛直応力を求めます。内空水位以下の水圧は別途加算します。

中詰め土による土圧の算定に用いる静止土圧係数です。背面土と同様、通常の砂質土や粘性土に対しては0.5としてよいとされています(道路土工 擁壁工指針 5-2-4(3))。

5. 材料

参考値: 道路土工 擁壁工指針 24.5kN/m3(鉄筋コンクリート)。

常時の鉄筋の許容引張応力度が変わります。道路土工 擁壁工指針 表4-10は、鉄筋が腐食しやすい環境にあることを考慮して、水中あるいは地下水位以下に設ける部材の値を一般の部材(180N/mm2)より低減し160N/mm2としています。地下水位以下に設置するU型擁壁では「水中あるいは地下水位以下」を選んでください。なお地震の影響を含む場合の基本値には、表4-10でこの区分が設けられていないため、この選択は影響しません。

内空側の路面舗装や調整コンクリートの重量です。浮上がり計算の擁壁自重WBに含めます。

6. 荷重条件

道路土工 擁壁工指針 5-2-4(3)の静止土圧係数です。土質や締固めの方法によって0.4〜0.7の値をとりますが、通常の砂質土や粘性土(wL<50%)に対してはK0=0.5としてよいとされています。

地震時の照査に用いる水平方向の土圧係数です。せん断抵抗角φと設計水平震度khから物部・岡部式(道路橋示方書Ⅴ耐震設計編 式(解4.2.4))で自動入力されます。壁面摩擦角δEは、道路橋示方書Ⅰ共通編 表-解8.7.1の「壁の断面計算・土とコンクリート・地震時土圧を算出する場合」によりδE=0としています。なお同Ⅴ編の式(解4.2.3)がいわゆる修正物部・岡部式ですが、これは良質な材料で密に締固められた橋台背面土を前提にピーク強度・残留強度を用いる専用の式であり、一般の背面土を持つU型擁壁には適用しません。

浮上がり計算のせん断抵抗QSと、張出し底版がある場合の土圧作用面の摩擦角に用います。

7. 基礎条件

道路橋示方書Ⅳ下部構造編 表-8.5.1の推定方法です。選んだ方法により換算係数αが決まり(常時1/4/4/1、地震時2/8/8/2)、鉛直方向地盤反力係数kvの自動計算に用います。

地盤の変形係数です。標準貫入試験のN値から推定する場合は E0 = 2,800N(N=10なら28,000kN/m2)としてください。

底版を弾性床上のはりとして解くための鉛直方向地盤反力係数です。擁壁工指針には算定式がないため入力値としています。地質調査結果から設定するか、道路橋示方書Ⅳ下部構造編によって別途算定してください(参考値: 砂質土30,000〜100,000程度)。

滑動の照査に用いる、擁壁底面と地盤との間の摩擦係数です。道路土工 擁壁工指針 式(解5-10)により μ = tanφB とするか、同 解表4-9の値を用います(参考値: 土種区分1種 0.5、2種 0.4、3種 0.3)。

擁壁底面と地盤との間の付着力です。評価が難しい場合は安全側に0としてください。

基礎地盤の許容鉛直支持力度です。別途「直接基礎の地耐力計算」等で求めた値を入力してください。参考: 道路橋示方書Ⅳ下部構造編 表-9.5.1の鉛直地盤反力度の制限値は、粘性土200・砂400・砂れき700kN/m2、岩盤は硬岩(亀裂少)2,500・(亀裂多)1,000・軟岩600kN/m2です。

8. 浮上がり条件

土のせん断抵抗または側壁と土の摩擦抵抗です。液状化に対する抵抗率FLが1.0以下の土層におけるQSは考慮してはならないとされています。安全側に0としてかまいません。なお常時はQSを無視するため、常時の計算には用いません。

液状化に伴う過剰間隙水圧による浮力です。液状化の発生が予想されない場合は0としてください。算出方法は共同溝設計指針を参考にしてください。

9. 配筋条件

側壁の外側(背面側)に配置する主鉄筋です。背面土圧により側壁の外側に引張が生じる場合の照査に用います(掘割式では通常こちらが主となります)。

側壁の内側(内空側)に配置する主鉄筋です。中詰め土の土圧や内水圧が背面土圧を上回ると側壁の内側に引張が生じるため、その場合の照査に用います。

10. 許容値

道路土工 擁壁工指針 5-7-6により、常時は1.1以上とします。

同上。レベル1地震動に対しては1.0以上とします。

道路土工 擁壁工指針 式(解5-10)により、常時は1.5を下回ってはならないとされています。

同上。地震時は1.2を下回ってはならないとされています。

設計基準強度に応じて自動入力されます(道路土工 擁壁工指針 表4-3の曲げ圧縮応力度)。

同上(表4-3のτa1)。τa1には有効高及び軸方向引張鉄筋比に関する補正係数(表4-4・表4-5)を乗じるため、本ツールでは断面ごとに自動で乗じています。

道路土工 擁壁工指針 表4-2の、地震の影響を考慮する場合の割増し係数です。

使用鉄筋材と部材の設置環境に応じて自動入力されます(道路土工 擁壁工指針 表4-10、地震の影響を含まない場合)。

表4-10の「地震の影響を含む場合の基本値」(SD295A/B: 180、SD345: 200)に、表4-2の割増し係数1.50を乗じた値を既定値としています。

リアルタイムプレビュー

入力に応じて自動更新

断面図

計算方法と適用範囲

このツールで計算できること

掘割式U型擁壁(側壁と底版が一体のU字断面。延長1mあたり)について、部材の安全性(側壁・底版の断面照査)、浮上がりに対する検討、擁壁自体の安定性(滑動・転倒・支持)の照査を行います。内空が空の掘割式のほか、中詰め土を入れた形式も扱えます。常時に加えて、設計水平震度を用いた地震時の照査に対応します。

計算方法・使用式

  • 土圧: 常時は静止土圧(p = K0・(γ・z + q)。道路土工 擁壁工指針 式 解5-5)、地震時は物部・岡部式による地震時主働土圧係数(道路橋示方書Ⅴ耐震設計編 式(解4.2.4))の水平成分と躯体自重の慣性力を考慮します。法担ぎは換算等分布荷重として上載荷重に加算します。
  • 側壁: 底版との結合部を固定端とする片持ばりとして、土圧・水圧による曲げモーメント・せん断力を求めます(指針5-7-6(3))。
  • 底版: 弾性床上のはり(Winklerばり)として、鉛直地盤反力係数kvによるばね支持のはりを有限要素で解き、断面力と地盤反力分布を求めます(指針5-7-6(3))。
  • 浮上がり: Fs = (WB+WS+QS)/(US+UD)(躯体自重・上載土重量・その他抑え荷重と、静水圧による揚圧力・その他揚圧力の比。指針 式 解5-42)。
  • 安定性: 滑動は Fs = (V0・μ+cB・B′)/H0(式 解5-10、B′= B−2e)、転倒は合力作用位置の偏心量(常時 |e|≦B/6、地震時 |e|≦B/3)、支持は地盤反力度と許容支持力度の比較で照査します(指針5-3-2)。
  • 部材計算は許容応力度法(単鉄筋長方形断面、ヤング係数比n=15)で、コンクリート圧縮σc・せん断τ・鉄筋引張σsを照査します。

入力と出力

入力: 検討ケース・地盤種別・地域別補正係数cz・設計水平震度kh、躯体形状(高さH・内空幅・側壁厚(天端/基部)・底版厚・張出し)、左右別々の土砂形状(法担ぎ・天端からの下がり)、地下水位・内水位・中詰め土の条件、材料(γ・Fc・鉄筋材・部材の環境条件)、静止土圧係数K0・地震時土圧係数Kea・φ・上載荷重q、基礎条件(鉛直地盤反力係数kv・摩擦係数μ・付着力cB・許容支持力度)、浮上がりのその他荷重、配筋(径・ピッチ・かぶり)、許容安全率・許容応力度(多くは他の入力から自動入力)。

出力: 側壁基部・底版(端部・中央)の応力度照査、浮上がりの安全率、滑動・転倒(偏心量)・支持(地盤反力度)の照査結果のOK/NG判定と、底版の断面力・地盤反力の分布。計算過程つきの帳票(計算書)を出力できます。

適用範囲・計算上の仮定

  • 延長1mあたりの2次元断面として計算します。躯体は左右対称とし、土砂形状のみ左右別々に与えられます。
  • 常時の土圧は静止土圧です(掘割式U型擁壁は変位を許さない構造のため)。主働土圧への低減は行いません。
  • 土圧は水平成分のみを考慮し、鉛直成分は無視します(滑動・転倒に対して安全側)。
  • 底版の解析は鉛直地盤反力係数kvに依存します。kvの設定が結果に大きく影響します。
  • 掘割式では本来省略できるとされる安定性の照査(指針5-3)も、左右の土砂形状が異なる場合の偏土圧や中詰め式に備えて常に行います。
  • 地下水位・内水位は静水圧として扱い、浸透流・間隙水圧の変動は考慮しません。

使用基準・参考文献・設計者が確認すべき事項

  • 道路土工 擁壁工指針(平成24年7月、日本道路協会): U型擁壁の設計(5-7-6)、静止土圧(式 解5-5)、浮上がりの照査(式 解5-42)、滑動(式 解5-10)・転倒・支持の照査(5-3-2)、許容応力度(表4-3〜表4-5・表4-10)。
  • 道路橋示方書・同解説Ⅴ耐震設計編(平成29年11月、日本道路協会): 地震時主働土圧係数(物部・岡部式、式(解4.2.4))。

設計水平震度・許容安全率・許容応力度・土質定数・鉛直地盤反力係数は参考の既定値を自動入力しますが、地域・地盤条件により異なります。採用値の妥当性のほか、揚圧力の設定(地下水位の季節変動)、施工時の排水、支持地盤の許容支持力度は、設計者が別途確認してください。