宅地用重力式擁壁の安定計算|土質区分から土圧係数・背面勾配を自動計算

v1.0.0 最終更新日: 2026-08-27

宅地に用いる重力式擁壁の設計計算ツールです。土質区分を選ぶと土圧係数などが入り、背面勾配も自動で決められます。常時の転倒・滑動・偏心量の安定計算を行います。

このツールで検討できること
  • 土質区分(1種・2種・3種)を選ぶと、土圧係数KA・単位体積重量γt・内部摩擦角φ・基礎地盤の摩擦係数μが参考値で入ります。
  • 背面勾配T3は自動計算できます。安定計算を満たす最小の勾配を、T3=0から指定したピッチ刻みで広げながら探します(直接入力にも切り替えられます)。基礎幅Bは B=T1+T2+T3 として自動的に算出します。
  • 延長1mあたりの台形断面で、常時の滑動・転倒・偏心量の安定計算と、最大地盤反力度の算定を行います。土圧は簡易式(土圧係数KA)と試行くさび法から選べ、上載荷重・フェンス荷重・法担ぎに対応します。
対象外・注意が必要な条件
  • 常時のみを扱います。地震時(設計水平震度による照査)が必要な場合は、重力式擁壁の安定計算をお使いください。
  • 自重で土圧に抵抗する無筋コンクリートの形式のため、部材(断面)の照査は行いません。躯体に引張が生じないことが前提です。
  • 背面土は単一土層・水位なしとし、地下水位・水圧・浮力は考慮しません。滑動照査で受働土圧による抵抗は見込みません。支持力の照査は別途、直接基礎の地耐力計算に連動して実施します。

適用範囲と計算上の仮定をすべて見る

1. 擁壁形状

底面から擁壁天端までの全高です。重力式擁壁は底版を持たず、躯体そのものが底面で直接地盤に接します。

天端の前端から後端までの幅です。

天端前端から底面前端までの水平方向のずれです(底面のほうが前へ張り出す)。0にすると前面が鉛直になります。

自動計算では、転倒・滑動・偏心量の照査を満たし、(目標地耐力を設定した場合は、最大地盤反力度がその値以下になることも条件に加えて)最小の背面勾配T3を、指定したピッチ刻みで探して採用します。T3=0(背面が鉛直)から順に広げ、最初に条件を満たした勾配を採ります。断面寸法が決まっている場合は「直接入力」に切り替えてください。

天端後端から底面後端までの水平方向のずれです(底面のほうが後ろへ張り出す)。基礎幅Bは T1+T2+T3 として自動的に算出されます。

設定しない場合は、転倒・滑動(偏心量)の照査だけで背面勾配を決めます。設定すると、最大地盤反力度がその値以下になることも条件に加わります。

基礎地盤の許容支持力度(地耐力)です。最大地盤反力度 qmax がこの値以下になるまで背面勾配を広げます。平板載荷試験・標準貫入試験などによる値を入力してください(直接基礎の地耐力計算で求めた許容支持力度を使う方法もあります)。

背面勾配を広げるきざみです。0.05なら5cm単位の勾配になります。求まる背面勾配はこのピッチの倍数になります。

2. 材料・土質条件

重力式擁壁は無筋コンクリートのため、鉄筋を含む鉄筋コンクリートより小さい値(22.5〜23.0kN/m3程度)を用います。

区分を選ぶと、土圧係数KA・単位体積重量γt・内部摩擦角φが参考値で入ります(入力欄で個別に直せます)。1種・2種の参考値を用いる場合は粒度試験による証明が必要です。

壁面摩擦角δは、透水マットを使用する場合 δ=φ/2、使用しない場合 δ=2φ/3 として自動的に設定します。

区分を選ぶと、基礎地盤の摩擦係数μが参考値で入ります。1種・2種の参考値を用いる場合は粒度試験による証明が必要です。

3. 荷重・土圧条件

宅地の場合の標準は10kN/m2です。簡易式では、この荷重のうち5kN/m2を超える分を換算盛土高(q−5)/γtとして擁壁高に加算します。

「簡易式」は上載荷重を換算盛土高に置き換えて土圧係数KAから求める方法、「試行くさび法」はすべり角を変えてくさびのつり合いから最大の土圧を探す方法です。土圧の作用面が異なり、簡易式ではかかとを通る鉛直面(仮想背面)に水平に作用させ、その面と実背面のあいだの背面土を鉛直荷重として加えます。試行くさび法では傾斜した実背面に作用させ、合力を水平成分PAHと鉛直成分PAVに分けます。試行くさび法は背面勾配が大きいほど作用面に載る土量が増えるため、同じ形状でも簡易式より大きな断面が必要になる傾向があります。試行くさび法を用いる場合は、盛土材の三軸圧縮試験により内部摩擦角φを確認してください。

擁壁天端を法肩として、法幅:法高の勾配で法面が立ち上がり、その先は平坦として上載荷重qが載る形状です。

リアルタイムプレビュー

入力に応じて自動更新

断面図

計算方法と適用範囲

このツールで計算できること

宅地に用いる重力式擁壁(底版を持たない無筋コンクリートの台形断面)について、延長1mあたり・常時の安定計算を行います。土質区分(1種・2種・3種)を選ぶだけで土圧係数KA・単位体積重量γt・内部摩擦角φ・基礎地盤の摩擦係数μが決まるため、土質定数を個別に調べなくても計算を始められます。土圧の算定、滑動・転倒・偏心量の安定計算、最大地盤反力度の算定を行い、背面勾配T3は安定を満たす最小の値を自動で探せます。

計算方法・使用式

  • 断面と基礎幅: 天端幅T1を基準に、底面へ向けて前面勾配T2・背面勾配T3の分だけ外側に広がる台形断面です。底版を持たず躯体そのものが底面で地盤に接するため、基礎幅は B=T1+T2+T3 として自動的に算出します。
  • 土圧(簡易式): 土質区分の土圧係数KAは鉛直な壁面・水平な地表面を前提とした値のため、かかと(底面後端)を通る鉛直面を仮想背面として、そこに水平に作用させます。上載荷重qのうち5kN/m2を超える分を土に換算し、換算盛土高 H′=H1+(q−5)/γt として PA=1/2・KA・γt・H′^2、作用位置は底面から H′/3 の高さとします(上載荷重が5kN/m2以下のときに擁壁高を減らすことはしません)。仮想背面と実背面のあいだにある背面土(三角形。T3×H1/2)と、その上に載る上載荷重(T3×q)は、躯体を押さえる鉛直荷重として計上します。
  • 土圧(試行くさび法): こちらは実背面(傾斜した躯体の背面)を土圧の作用面とします。すべり角ωを刻み幅ごとに変え、各ωについてくさびに働く3力(自重W・すべり面反力R・壁面反力P)のつり合いをベクトルで解いて、その最大値を主働土圧とします。合力は背面に対して(α+δ)傾いて作用するため(α=atan(T3/H1) は背面の鉛直からの傾き)、水平成分 PAH を滑動・転倒に、鉛直成分 PAV=PAH・tan(α+δ) を鉛直力に算入します。この場合、背面の上に載る土砂・上載荷重の重量はPAVとして評価済みのため、鉛直荷重に別途は計上しません。
  • 2つの方式の違い: 簡易式は鉛直な仮想背面、試行くさび法は傾斜した実背面と、土圧の作用面そのものが異なります。試行くさび法は背面勾配が大きいほど作用面に載る土量が増えて土圧合力が大きくなるため、同じ形状でも簡易式より大きな断面が必要になる傾向があります。どちらを用いるかは設計者が判断してください。
  • 壁面摩擦角δ: 透水マットを使用する場合は δ=φ/2、使用しない場合は δ=2φ/3 とします。
  • 法担ぎ: 擁壁天端を法肩として、法幅:法高の勾配で法面が立ち上がり、その先は平坦として上載荷重qが載る形状として扱います。簡易式では法面部分(法幅×法高の直角三角形断面)の土砂重量を法幅の区間に均等分布する上載荷重に置き換えて換算盛土高に加算します(盛土等防災マニュアルの解説に示された換算図表によるものではありません)。試行くさび法では法面形状をそのまま地表面としてくさびの自重を算出します。
  • 安定計算: 滑動は Fs=ΣV・μ/ΣH ≧ 1.5、転倒は Fs=ΣMr/ΣMt ≧ 1.5、および合力の作用位置の偏心量 |e| ≦ B/6 で照査します。擁壁前面の受働抵抗は見込みません。フェンス荷重を考慮する場合は、擁壁天端から1.1m上に水平力1.0kN/mが作用するものとして水平力・転倒モーメントに加えます。
  • 地盤反力度: |e|≦B/6のとき台形分布 qmax=ΣV/B・(1+6e/B)、B/6を超えるときは有効載荷幅による三角形分布 qmax=2ΣV/(3(B/2−|e|)) とします。
  • 背面勾配の自動計算: 背面勾配T3の決め方は「自動計算」が既定です。上記の安定計算(滑動・転倒・偏心量)を満たし、(目標地耐力を設定した場合は、最大地盤反力度qmaxがその値以下になることも条件に加えて)最小の勾配を、指定したピッチ刻みで探します。T3=0(背面が鉛直)から順に勾配を広げ、最初に条件を満たした値を採用します。断面寸法が決まっている場合は「直接入力」に切り替えられます。

入力と出力

入力: 背面勾配の決め方(自動計算/直接入力)と、自動計算のときの目標地耐力・調整ピッチ、躯体形状(擁壁高H1・天端幅T1・前面勾配T2・背面勾配T3。寸法の記号は重力式擁壁の安定計算・構造図作成ツールと共通です)、無筋コンクリートの単位体積重量γc、背面土と基礎地盤の土質区分(KA・γt・φ・μは区分を選ぶと参考値が入り、個別に直せます)、透水マットの使用、上載荷重q・フェンス荷重、土圧の算定方法と法担ぎ。

出力: 滑動・転倒の安全率と偏心量の照査結果、最大地盤反力度qmaxのOK/NG判定。計算過程つきの帳票(計算書)を出力でき、構造図作成ツール・直接基礎の地耐力計算ツール・地盤改良の検討ツールへ条件を引き継げます。

適用範囲・計算上の仮定

  • 延長1mあたりの2次元断面として計算します。
  • 常時のみを扱います。地震時(設計水平震度を用いた震度法による照査)には対応していません。地震時の検討が必要な場合は重力式擁壁の安定計算をお使いください。
  • 底版を持たない台形断面(前面勾配・背面勾配)の無筋コンクリート擁壁が対象です。自重で土圧に抵抗する形式のため、部材(断面)の照査は行いません。躯体コンクリートに引張が生じないことを前提とする形式のため、必要に応じて縁応力等を別途確認してください。
  • 背面土は単一土層・水位なしとし、地下水位・水圧・浮力は考慮しません。
  • 滑動照査では受働土圧による抵抗を見込みません。
  • 支持力の照査は行いません(最大地盤反力度の算出まで)。許容支持力度との比較は、直接基礎の地耐力計算などで別途行ってください。
  • 許容安全率(滑動・転倒とも1.5)は自動的に決まります。事業・地域の基準で別の値を用いる場合は対象外です。
  • 背面勾配の自動計算は、指定したピッチで勾配を広げながら安定計算を満たす最小の値を探すものです。前面勾配T2・天端幅T1・擁壁高H1は入力値のまま変えません。

使用基準・参考文献・設計者が確認すべき事項

  • 盛土等防災マニュアルの解説[第二次改訂版](令和5年11月): 土質区分ごとの土圧係数・単位体積重量・内部摩擦角・基礎地盤の摩擦係数の参考値、常時の照査項目と安全率、合力作用位置(底面の中央1/3以内)による照査。
  • 道路土工 擁壁工指針(平成24年7月、日本道路協会): 試行くさび法、重力式擁壁の設計の考え方。

土質区分の参考値は、粒度試験・三軸圧縮試験によらずに設計する場合の目安です。1種・2種の値を用いる場合は粒度試験による証明が、試行くさび法を用いる場合は三軸圧縮試験による内部摩擦角φの確認が必要です。基礎地盤が必要な地耐力を保有していることは、平板載荷試験や標準貫入試験により別途確認してください。根入れ深さ、排水工、地下水位の影響、背面土の締固めについても設計者が別途確認してください。